Monday 30 August 2010

ジュンク堂対話avec 清岡智比古!

6月に清岡さんとやったジュンク堂池袋本店での対談、オンラインで読めるようになりました。

http://www.junkudo.co.jp/UQ_report.html

持つべきものはよき同僚。あと3時間は続けられる対談でした!

ASLE-Japan 2010

27〜29日、新潟県山間部の棚田エリアで開催された環境=文学学会に参加。冬は積雪が3メートルにもなる地方で、夏のいまは峠から夜ごとに雲海が見える。不思議な美しさ。

会場はほくほく線まつだい駅に隣接したまつだいふるさと会館。われわれのシンポジウムは日曜日午前の最終セッションで「樹木 物質と想像力のあいだで」と題し、5人が以下の発表を行った。ぼくは司会。ディジタルコンテンツ系の大学院生4名の発表を、わが同僚・波戸岡さんが鮮やかにしめてくれた。

清岡秀哉「折口信夫の植物」
大洞敦史「日中戦争期の新聞歌壇俳壇に見る<外地>の樹木風景」
伊藤貴弘「なぜ、森を撮るのか? 2000年代の風景写真」
原一弘「樹木のサウンドスケープ」
波戸岡景太「見えない樹木たち 大江と丸谷の場合」

ひとり十分間の発表ではあったが、素材は文学、写真、音にまたがり、それぞれに意表をつくヴィジョンが提出できて、その後のディスカッション(三十分あまり)でもフロアからの活発な発言が得られた。

これから、この議論をさらに発展させて12月のギャラリー展示を構成してゆくつもり。

今回のASLEは地元の棚田写真家・佐藤一善さんに棚田を案内してもらったり、森の学校キョロロの大脇淳さんに水棲昆虫採集に連れて行ってもらったりといった課外活動が楽しかった。

現代日本でもっとも重要な小説家のひとりである林京子さんのトリニティ・サイト訪問をめぐるお話には感動。発表もどれも興味深かったが、とりわけ哲学者の河野哲也さんのそれに共感することが多かった。

終了後、ずっしりこたえる暑さの中、以前からいちど訪ねてみたかった小千谷へ。とりあえず駅前で名物のへぎそばを食べたあと、市立図書館の西脇順三郎記念室にむかう。蔵書の一部が移され並べられている。絵画の代表作いくつか。

そこから駅まで歩いて帰る途中、信濃川にかかる橋にたたずむ。すばらしい大河だ。その流れに、西脇の故郷を感じた。西脇がしめした多摩川への愛着の基層にあるものがわかった。

Friday 27 August 2010

『熊 人類との「共存」の歴史』

もう20年前のこと、ぼくはシアトルの大学で、比較文学専攻の大学院生だった。そのころ一緒に授業をとっていた外国人学生のひとりが、ベアント・ブルナー。その後、ノンフィクション作家になったドイツ人の彼の著書『熊 人類との「共存」の歴史』がこのたび翻訳され、出版された。伊達淳訳、白水社。

なんとめでたいことだろう! ベアントはおおよろこび、ぼくもわがことのようにうれしい。ダストジャケットのイラストもかわいい。これはぜひ熟読したい本。

ちなみにぼくは237ページにちらりと登場します。名前の漢字がまちがっているのが、ちょっと残念。

日本は、東京は、新宿からわずか2時間でツキノワグマ地帯に突入する、希有の国。これからも土地を熊と共有しつつ、森を大事に生きていこう。そのためにも、この本をどうぞ。お勧めします。

Saturday 21 August 2010

「東京新聞」8月22日

その『巡礼コメディ旅日記』の書評を、明日の日曜日の東京新聞に書きました。ごらんください。

いちど休職して、この巡礼の道をパリのサン=ジャック通りからサンチアゴ・デ・コンポステーラまで歩いてみようかな。

しかしキリスト教徒でないぼくには、アオテアロア=ニュージーランド南島のミルフォード・トラックのほうがよさそうです。

せめて夏が終わるまえに、また奥多摩を歩きに行きたい。

Friday 20 August 2010

美しすぎないこと

ドイツのコメディアン、ハーペイ・カーケリングのユーモラスな『巡礼コメディ旅日記』を読んで心に残ったことがある。

サンチアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼の旅の途上、ある町で彼はこんなことを思うのだ。

「この道の良さは、先へ先へと辿って行きたくなるところにある。美しい街はある、美しい風景もある、でも、ずっとそこにとどまっていたくなるほどに、抜きん出て、特別に美しいところはひとつもないのだ。これこそまさに真の道だ」

そしてこんな覚え書き。

「道の道たるゆえんとは、歩く者を一つところにとどまらせないこと」

本当にいろいろな対象についていえることだと思った。

Thursday 19 August 2010

ドだけのピアノ曲?

ピアノのすべての音をドに調律して弾く? あまりにも気になるコンサートです。


〜寒川晶子「なるとき」ピアノコンサートシリーズ第4回〜
『未知になるとき』 Becoming the Unknown

2010年9月11日土曜日  16時開演(15時半開場)

会場:横浜ユニオン教会(横浜市中区山下町66−2)

チケット:前売り2,000円 当日券2,500円
主催・出演:寒川晶子
特殊調律:鈴木良

助成:財団法人朝日新聞文化財団
協力:株式会社 橋本ピアノ

新井卓(写真) 粟津デザイン室  斎藤朋(制作協力) cochae  (チラシデザイン)



●最寄り駅

JR京浜東北線石川町駅元町口より徒歩15分
みなとみらい線元町・中華街駅元町口(5番出口)より徒歩10分
アメリカ山公園口(6番出口 丘の上までの直通エスカレーターがあります。)
より徒歩10分
*本会場は急激な坂を登り切った丘の上にございます。

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このコンサートでは88鍵あるピアノの鍵盤の音全てをドの音に調律し直して演奏するという。独自のコンセプトと技術をもつ寒川晶子ならではの構想であるが、そこに想像を超えた音の世界が展開されることは間違いない。それを教会という場所で自然環境を生かした時間演出の元に行うという。何という発想!確かなのは、こんな予測を超えたパフォーマンスには滅多に立ち会えないということだ。
  
一柳慧

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「ド」音のみに調律されたピアノ・・・
確定された「ド」音だけの世界から
未知なる響きを求めて
ただひたすらに音を歩く
そして時々立ち止まる


This piano tuned only to the note "do"...
From a world composed only with the determinate "do"
In search of an echo becoming the unknown
I go on walking through sound
And sometimes I pause on the way

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これまでに実演した「なるとき」
*「音楽になるとき」2008.1.27 *「虚像になるとき」2009.1.21 *「夢になるとき」2009.5.23(いずれも会場、主催は(財)トーキョーワンダーサイト)


●プロフィール

寒川晶子(Akiko Samukawa/ピアニスト・アーチスト

2001年華頂女子高等学校音楽科卒業
2005年フェリス女学院大学音楽学部をピアノ専攻で卒業
これまでにピアノを福井(旧姓川村)真裕子、小鍛治弘美、川村春海、黒川浩、中川賢一の各氏に師事。

神奈川県民ホール主催<アートコンプレックス>や金沢21世紀美術館主催の公演、三重県立美術館主催の公演などに多数参加し、音楽の表現を通じて未来へのものづくりに入れて活動している。2009年に開催されたトーキョーワンダーサイト主催のフェスティバルでは自身のプロデュース・実演による『虚像になるとき』が最優秀賞を受賞。また、作曲家グループ深新會関西主催の公演では作曲家小西円子氏の新作初演で参加。現代音楽の演奏活動も積極的に行っている。


Tuesday 17 August 2010

「北と南」完成!

若き友人、河内卓くんが始めた雑誌「北と南」の第1号が完成しました。創刊号は「仕事」特集、スタッズ・ターケルの精神にのっとっていろんな職種の人へのインタビューを掲載しています。

ぼくは仕事ではなく、詩を寄稿。いずれも「Agend'Ars」連作の一部です。

藤部明子さんの写真にも注目! 講読希望の人は、適当に声をかけてください。

Monday 16 August 2010

ベルカ、ストレルカ、50年!

みなさん、以下の事実に気づいていますか。もう50年になります。

ウィキペディアからの引用。

「ベルカ(Белка)とストレルカ(Стрелка)は、1960年8月19日にスプートニク5号に乗って宇宙で1日を過ごした後、無事地球に帰還し、地球軌道を周回して無事帰還した初めての地球生まれの生物となった。」

古川日出男さんのおかげで改めて不朽のものになったベルカの名。ここで改めて、その世界史的意味を考え直しておきましょう。

吠えろ、吠えろ、ベルカ、ストレルカ!

Sunday 15 August 2010

猿の捕獲

先日、町中に出てきたニホンザルの雄を麻酔銃で撃って捕獲したというニュースが大々的に報道されていた。

ここまで大騒ぎして、サルとヒトの生活空間を分けなくてはならないのだろうか。いるものはいるで、いいじゃないか。ヒト以外の種を排除してゆくのがヒトの居住の特性(「ペット」という名の名誉ニンゲンを別にして)。それで、都市がつまらなくなる。

またおいで。こんどは仲間を連れて。

リズムをとりもどす作戦会議!

友人のミュージシャン、港大尋さんからワークショップのご案内をもらいました。リズム・サーカス主催、「リズムをとりもどす作戦会議!」の第1期。

8月15日「リズムとは何か」
8月21日「声・ことば・人間」
8月28日「抵抗の論理」

いずれも会場は世田谷ものづくり学校です。チケットはリズムサーカスのサイトで。http://r-circus.com

同サイトではこの主題をめぐる港さんのインタビューも読めます。

http://r-circus.com/cotoba_interview20100710.html

バンド「ソシエテ・コントル・レタ」(国家に抗する社会)を率いる彼の活動は要注目。世界をみたすリズムについて、根源的に考え直すチャンスです!

夏だ、旅だ、旅がない、でもいつも旅だ

この夏は予定を立て損ねて、ずっと東京。イヤになるほどの仕事の山に、日々汗を流しながらとりくんでいます。エアコンのない家なので、どうにもスロー。でも扇風機という、人類史上でも有数のエレガントな発明に、ちょっぴり救われています。

そんなときにも知人、友人たちの旅はつづく。同僚の倉石さんは、このあいだの北海道(東川町)につづき明日は沖縄(佐喜真美術館)。倉石さんの場合はいずれも仕事ですが、それでもうらやましいことに変わりはなし。清岡さんは明日からパリ。ケ・ブランリ博物館でいまやっているのは「コンゴ川」と題した中央アフリカ美術特集らしく、これはぼくも見たいなあ。

http://tomo-524.blogspot.com/

ぼくの生涯の師匠、元来熱帯派といっていい西江雅之先生は、この夏は珍しく高緯度地方(北極圏)に行っておられるようです。

まあ、どこにいても旅は旅、たとえ自宅でも。意識を十分に覚醒させ、飛ばし、新たな体験を探りましょう。夏から秋へ、その場の宇宙旅行がつづきます。

Tuesday 10 August 2010

この夏が勝負だ、倉橋由美子

明治の学部生・大学院生のみんなで倉橋由美子文芸賞への応募を考えている人、勝負はこの夏だよ。

http://www.meiji.ac.jp/koho/hus/html/dtl_0006143.html

書いて書いて削って削って、とにかく1作を仕上げてごらん。自分でも思ってもみなかったことが、必ず出てくる。

ただし時間をかけること! 200枚書いて100枚削るくらいの気持ちで、言葉のエコノミーを学ぶことにしよう。

健闘を祈る。

Saturday 7 August 2010

いよいよ

9月刊行予定の詩集、ゲラを見終え、「あとがき」を書きました。カバーに使う写真も選定(もっとも写真なしにする可能性もまだあり)。すべてすでに発表しているものばかりですが、こうして64篇をまとめて読むと、自分でもそれまで気づいていなかった連関が見えてきます。

その「あとがき」の第一段落を転載しておきます。

4×4=16、4×4×4=64。十六行詩を書きつぎ、六十四篇をもって一冊の詩集とするという企図は、単純な掛け算によって始まった。本書を第一分冊として、おなじ形式でさらに三冊を準備する。4×4×4×4=256。やがてこの二百五十六篇四千九十六行がかたちをとるとき、地水火風がいかに私をつらぬき私を造形するかをめぐって、一定の回答が得られるのではないかと思う。ぼくにとって詩とは、第一義的には「私」がさらされるそれらの力に対する言語的な応答であり、その痕跡の記憶術だ。」

Thursday 5 August 2010

夏休みの課題図書

前期のゼミでとりあげた、オーストリア出身で長らくメキシコで活動した思想家イヴァン・イリイチについてのまとめの会を、たぶん9月の合宿前に行います。M1の3人の発表を中心にします。

合宿は3泊。毎晩、勉強会をします。その課題図書を決めました。

宮本常一『塩の道』(講談社学術文庫)
伊達宗行『「理科」で歴史を読みなおす』(ちくま新書)
松岡正剛『日本流』(ちくま学芸文庫)

どれも楽しみながら読めるものばかりですから、8月のうちに必ず読んでおくこと。

これはもちろん全員の共通語彙開発のための課題図書でしかなく、個々にやるべきことは山のようにあります。M2は修士論文・制作の完成にむけてすべての努力をつぎこむこと。M1は、各自の主題に沿った20〜30枚の完成原稿(発表可能な水準のもの)を8月末までに仕上げること。

汗をダラダラ流しながら本を読むのもいいものです。いろいろがんばりましょう。

Tuesday 3 August 2010

入試終わって

2日、大学院一般入試。3名合格。これで学内選考の10名と合わせて、来春からディジタルコンテンツ系に参加する13名が確定しました。

2月に第2期の入試を行います。若干名、余裕があります。興味がある人はぜひ受験してください。まずは相談に来てください。

ところで、このあいだ学部1年生から「研究ってどうすればいいんですか?」と尋ねられた。ひとことでいうなら、それは「読んだことのないものを読み、考えたことのないことを考え、書いたことのないことを書く」につきる。

その特徴は、過ぎてみるまで自分が歩んでいる道そのものがよく理解できないということ。薄明かりの中、手探りで、危険な森の道をゆく感じ。それが最後の「。」を打ったとき、パッと光がさしこみ、自分がカバーした経路がわかり、自分の考えがはっきりと進んだことを自覚できるようになる。

「読み書きを中心に考える」ということが鉄則。まずは自分だけのノートを作ること。研究内容が文系だろうが理系だろうがまったく関係なく、それは誰もがやっていること、やるべきことです。

注意すべきは、読めるもの、読んですぐ理解できるものばかりを読んでも力はつかないという点。よくわからないもの、理解しがたいもの、異様なものを、ひたすら読んでゆく必要があります。もちろん、一足飛びにそうすることはできないので、さしあたってはいまの自分より少し先にあるものを求め、獣のように執拗にそれを追うこと。

ついで、考えたことを書くこと。人に見せられる文章にすること、そして読んでもらうこと。読んで必ず批判を受けること。教員はそのためにいるのだから、最初の段階から、それを習慣にすることです。毎週、原稿用紙にして3〜6枚くらいを書いてみて、それを読んでもらい、ボロボロになるまで徹底的に批判してもらうことを勧めます。

読み書きの努力を怠れば、何の進歩もなく2年間を終えるという愚かな結末を迎えることになります。拾い読みでいいから、毎日、それまで知らなかった本に意識的にふれてください。そうして2年間にふれる720冊のうち、たぶん36冊くらいが、修士論文に直接の建築プランと素材を提供し、また生涯の宝になるはず。

本以外にもあらゆるジャンルの表現に意図的に接してゆくべきことはいうまでもありませんが、その場合も、本と本が連なる丘の稜線が、きみの考えの輪郭を決めてゆくでしょう。

来春からわれわれの探求に加わる13人のみんな、ただちにこの習慣にむけてチューニングを開始してください。作品制作を考えている人も、それはおなじこと。毎日やる、必ず。

「水牛のように」8月号

「水牛のように」更新されました。

http://www.suigyu.com/sg1008.html#05

ぼくは「犬狼詩集」11、12を寄稿。どちらもなぜ、いつ書いたのか、覚えがない。ともあれ、この2編も9月刊行予定の詩集に収録するつもりです。

八巻さん、いつもありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします!