Thursday 9 October 2008

ル・クレジオ

このところフランス語圏からのノーベル文学賞受賞者がなかったが、ひさびさ。

現在、フランス語で書いているもっとも充実した作家であることはまちがいないので、いかにも当然ではある。フランス語作家としては1985年のクロード・シモン以来。「フランス人」作家としては2000年の高行健以来。

ぼくは別にノーベル賞に特に興味があるわけではないけれど、ル・クレジオかエドゥアール・グリッサンが受賞したらすばらしいだろうな、とは思っていた。

ともあれ、自分が訳した作家がノーベル賞を受賞するのは、そうある話ではなさそう。(ぼくが訳したのはアメリカ先住民をめぐるエッセーを集めた『歌の祭り』という本、岩波書店。そして来年後半に、彼のヴァヌアツ旅行記『ラガ』を出すつもり。)

奇しくも、さきほど電車でアメリカ文学の飯野友幸さんと乗り合わせ、飯野さんが訳しているアメリカの詩人ジョン・アシュベリーが今年は有力候補だという話を聞いたばかりだった。そのときには、ル・クレジオのことはまったく思い出しもしなかった。

ちなみに、ル・クレジオはモーリシャスとフランスの二重国籍。半分は「非フランス人」。

将来、たとえば多和田葉子がそのドイツ語作品によって受賞するとか、ブラジルの日本語作家が受賞するとか、ぜひそういう方向に進んでほしいノーベル賞だった。

国籍で文学を語るのを、いいかげん止めるためにも。その点、クッツェーが南アフリカ作家からオーストラリア作家に変わったのは、おもしろい例になるかも。