Wednesday 30 July 2008

早稲田の午後

早稲田大学の学部横断的な1、2年むけゼミ「テーマカレッジ」の今年の主題「越境する想像力」のシンポジウムに招かれた。

よしもとばななさんのイタリア語訳者として知られる、早稲田大学准教授のアレッサンドロ・ジェレヴィーニさんとぼくが話し、それから参加者のみんなとのディスカッションに移った。

ジェレヴィーニさん(ばななさんのエッセーに出てくる「アレちゃん」)は、ほんとうに貴公子然とした、おしゃれで頭のいいイタリア男の極致。その生き方は、うらやましいくらい多彩で変化に富む。

http://www.yomiuri.co.jp/book/author/20050614bk02.htm

自作の小説の背景を語ってくれ、ついで朗読。じんとくる場面だった。

ぼくは「なぜ外国語で書くのか?」という題で、文学の創作と翻訳の関係、そして外国語での創作がもつ意味について、多和田葉子さんと関口涼子さんを引き合いに出して語る。多くの論点が、ちょうどジェレヴィーニさんの話の脚注になり、まずまず。若き友人のももちゃんがひょっこり顔を出してくれて、うれしかった。

終了後の懇親会も楽しく、積極的に本質をついた話をしてくれる学生が多くて、刺激になった。しかも! いま1、2年のかれらのうち3、4人が、やがて明治DC系を受験してくれるかもしれない。そうなれば、おもしろい。

他大学に非常勤講師に行ったり講演に行ったりすることを、単なるアルバイト的に思っている人がいるが、そうじゃない。具体的な学生たちとのやりとりの中で広がるネットワークは、どんなに小さくても確実に社会的なインパクトをもつし、それ以外には生まれえなかったような知的コミュニティの形成をはたしている。

ジェレヴィーニさんは明日からイタリアに帰国。ぼくはこれから入試。遠からぬ再会を約して別れたのも楽しかった。