Thursday 24 April 2008

ウィキペディア礼賛

学習院英文科の授業日。受講者は8名で、たぶんこれで確定。1年間よろしく。

トラヴェル・ライティングのアンソロジーを読んでゆくため、いろいろ調べるべきことも出てくる。まずは分担することなく、各自が調べてくることにした。すると自動的にネット検索になるので、「ウィキペディアは信頼できるか?」という話になる。

結論からいうと、ぜひウィキペディアを参照してほしい。ただし英語版(充実度がぜんぜんちがう、もちろん項目によりけりだが)。誤った情報もあるのかもしれないが、それは従来型の紙版の権威ある百科事典だっておなじこと。むしろ、多くの人の知識をもちよって作るというスタイルを支持したい。

とはいえ、可能なときには複数のソースを点検することは欠かせないし、思想や文学の分野では「原典主義」をできるかぎり貫くに越したことはない。これも、いうまでもないこと。

ぼくがこれまでにウィキペディアの威力を痛感したのは、特に植物名に関して。植物はローカルな名前が翻訳不可能なことが多いし、画像がなければどんなものかもわからない。

そこで英語版で、たとえばkhat とか peyoteとかを引いてみる。はあ、なるほど。こういう姿をしておられるのか。一発でわかる。

かつて「総合的翻訳」を夢想していたことがあった。テクストを読んでゆき、たとえば人名や地名や植物名や鳥の名が出てくると、それをクリックすれば即座に画像と注釈が出てくるような。そしてそんなテクスト体験は、いまではたやすく実現できる。

ところで、辞書に関しては、やはり紙の辞書が捨てがたい。これは言葉の森、そのもの。それに対して電子辞書は、あらかじめ決まった道をゆく、言葉の大規模遊園地でしかない。作り物くささ、予定調和の匂いがぷんぷんする。さっきもスペイン語辞書を見ていて、こんな表現があって、しばしたたずんだ。紙の辞書はすばらしい。

No todo el monte es orégano. (山じゅうにオレガノが生えているわけではない。)

この諺、「人生楽あれば苦あり」の意味だそうだ。ということはオレガノが香る焼きたてのピッツァを食べることこそ人生の至福なのか。いわれてみると、どうもそんな気がしてくる。この諺、しばらく使ってみよう。