Sunday 16 December 2007

オリシャのリズム

明治大学リバティーアカデミーのオープン講座『偉大なるアフリカ=ブラジルの精神文化、オリシャ信仰と音楽』を見に、聴きにゆく。

地理学者の江波戸昭先生がずっとコーディネートしている「世界の民族音楽を聴く」シリーズの枠。今回はパーカッショニストの翁長巳酉さんと彼女のグループ。翁長さんとひさびさに再会し、大変に楽しいひとときとなった。

彼女は80年代、伝説のグループ「じゃがたら」にも参加していたミュージシャン。リズム道を追ううちに、ブラジルの宗教儀礼音楽をめぐる旅がはじまり、カンドンブレ(アフリカ系の信仰)やウンバンダ(こちらは完全にブラジル起源)のテヘイロ(祈りの場)をめぐり、歌とリズムを学んできた。リオにはじまり、バイーアへ、さらにペルナンブコやマラニャンゥへ。田舎へ行けば行くほどアフリカが強烈に残存し、無限に新しい発見がつづく。

なんだかんだで10数年ブラジルに滞在し、いまもしょっちゅう出かけては音と律動と人々の祈りを体験している、すごいつわもの。文化人類学者だって、ここまで徹底的な調査を持続的にしている人は、絶対にいない。

たとえばマラニャンゥ州では、「コドー」の村に住んだ。もともとの奴隷村。といってもブラジルの奴隷たちは、ここに住み、ここから出勤し、帰宅すればそれなりの自由があったというのだから、奴隷といってもカリブ海なんかとはかなりニュアンスが違うのかもしれない。そのコドーはいまも残り、それぞれに独自の伝統を維持している。

おもしろい映像、お話、そして実際の演奏、踊り。友人たちと堪能することができた。

巳酉さんの意見で印象に残ったのは、次のこと。かれらは踊っているうちにトランスに入るけど、どれだけ入っても「自分が神にならない」。これがいろんな現代カルトとまったくちがうところで、自分が全権を握ることが最大のポイントとなるような教団とは、まったく正反対のベクトルをもつ。目指しているのは敬虔さであり、コミュニティ運営の知恵なのだ。

巳酉さんは、ぜひまたいつか明治に別のかたちでお呼びしたいと思う。彼女の活動についての告知は、これからここにも随時掲載します。(さしあたっては明日12月16日20時から西荻のアパレシーダ(03−3335−5455)でウンバンダとカンドンブレの儀式の記録ビデオの上映会があるそうです。)

終了後、たまたま来ていた友人たちとランチョンにゆき、談笑。24歳(カワチくん)から49歳(ぼく)まで、8人で死ぬほど笑った。迫るいくつものしめきりを、このときばかりは忘れて。それもこれもブラジルの、アフリカの力の一部なのだ。